第1 商標とは何か 1.商標法2条による定義
この法律で「商標」とは、文字、図形若しくは記号若しくは立体的形状若しく はこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、次に掲げるものをいう。
1 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用 をするもの
2 業として役務を提供、又は証明する者がその役務について使用をするもの (前号に掲げるものを除く。)
2.商標の本質について
自他商品識別機能---商品名、産地、品質、効能のみでは商標と言えない。
出所表示機能
品質保証機能
広告宣伝的機能
3.商標の種類
対象物による分類----商品商標、サービスマーク(役務商標)
構成要素による分類--文字商標、図形商標、記号商標、結合商標、 立体商標(くいだおれ人形)は、
平成9年4月施行改正商標法により認められたものの、動的商標(かに道楽の看板)、
音標商標(JRAのファン ファ−レ)は、現行法上は認められていない。第2.商標権の効力 1.登録主義
商標権は登録により発生する。
cf.英米----使用主義
2.属地主義
商標制度は国毎に異なり、それぞれに出願して権利を取得しておかなければ保護されない。
著作権は無方式主義を採っており、条約により他の国で発生した著作権でも日本で保護される。
3.専用権と禁止権
専用権とは、指定商品または指定役務に登録商標を独占排他的に使用する 権利をいう(商標法25条)。
禁止権とは、第三者に対して、指定商品または指定役務に類似する商品または役務に、登録商標またはこれに類似する商標を使用することを禁止し得る権利をいう(商標法37条1号)。
* 平成9年改正(商標権侵害に係わる罰金の法人重課)
法人が商標権侵害を行った場合は、行為者である個人のほか、法人も罰金 を課せられることとなった。改正法では、商標権侵害の重大性に鑑みて、法 人に課せられる罰金の上限が1億5千万円とされている(商標法82条)。第3.商標の使用とは 1.商標法2条3項による定義
この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
1 商品又は商品の包装に標章を付する行為
2 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、又は輸入する行為
3 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又 は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
4 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付し たものを用いて役務を提供する行為
5 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の 利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供の ために展示する行為
6 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標 章を付する行為
7 商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、 又は頒布する行為
2.具 体 例
1、ドメイン名
(事 例) ホームページで商品やサービスを宣伝したり、サイバーモールを 開いた場合、ドメインネームの使用は、商標としての使用にあたるか。
(結 論) 原則として使用に当たらない。 但し、サイバーモールの開設に付随してインターネット接続サービスという役務を提供するときは、その役務ー国際分類38類「電子計算機端末の通信ネットワークの提供」ーについては商標の使用となる。
(理 由) ドメインネームが商標的機能を発揮しうるとしても、本来、会社 の商号や住所、電話番号と同じく、発信主体や発信場所を表示する ものにすぎない。例えば、ある商標を第三者が所有していても同一 法務局内にその商標と同一か、類似となる商号がなければ、その商 標と同じ会社名を(商号)として採択することができる。同様に、ド メインネームもアドレスなどを特定するために付与されるものなの で、商品やその広告に販売者名やその電話番号が記載されても商標 の使用と見られないように、ドメインネームがブラウザの画面上に 表示されることがあっても、商標の使用にはならないと言うべきで ある(同旨・横山経通「インターネット法−ビジネス法務の指針−」 商事法務研究会39頁)。 但し、サイバーモールの開設に付随してインターネット接続サー ビスという役務を提供するときは、役務の提供に当たりその提供を 受ける者の利用に供するブラウザの画面上に標章を付したものを用 いて役務を提供することになるから、その役務との関係においては、 商標の使用に当たると考えられる。 また、著名商標に只乗りすることを狙って無関係な者がドメイン ネームを先に取得することの弊害が指摘されているが、この問題は、 不正競争防止法により調整すべきもので、ドメインネームの使用を 商標の使用とみることにより解決すべきではない。
(注 記) この問題について、真先に問題提起をされた斉藤浩貴弁護士は、「何をもって商標の使用というかについては、商標法2条3項に規 定があり、「商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に商標を付して展示し、又は頒布する行為」が含まれるのでホー ムページで商品やサービスの宣伝をしたり、サイバーモールを開 いたりすれば、そのホームページのドメインネームは、商標法上の標章の使用に当たるということができると思われる。」と記述して、ドメインネームの使用が商標の使用となる可能性があ るとされている
(「インターネットドメインネームと商標法」ーーhttp://mci.rittor-music.co.jp/12th/max12.htm) 。
2、ホームページ
ホームページに商品又は役務と関連付けて商標を表示すれば、一般に、「商品又は役務に関する広告」か、「情報の提供」という役務について使用するものとなるから、商標法上の商標の使用となる(同旨・岡村久道、 近藤剛史「インターネットの法律実務」新日本法規208頁)。 但し、商品及び役務と全く関係ない個人のページに、例えば、「SONYのぺージ」と表示しても、商標法2条3項のどの行為にも該当しないので、商標の使用とはならない。
3、商品の写真
例えば、サイバーモールにおいて、商品の写真が掲載された場合、商品 の広告となるから、その商品に使用されている名称は、商標の使用となる。 しかし、個人のページに「私のお気に入りのGOODS」として掲載するような場合は、商標法2条3項のどの行為にも該当しないので、商標の使 用には該当しないと考えられる。また、商品が背景に写っているだけで、 商品の取引や販売とは関連性が薄いような写真の掲載は、商標法上の商標 の使用とはならないと思われる。<参考文献>
文中に引用したもののほか、
1、マルチメディアと商標(弁理士松倉秀実)
http://mci.rittor-music.co.jp/12th/pt3.htm
2、ワインラベルと著作権法(弁護士宮下佳之)
INTERNET MAGAZINE 1995/8 142 頁
3、あなたの社名はもう使えない?
Weekly AERA 1996.8.5 26頁
4、ソフトウェアの商標登録出願 ソフトウェア研究会編「ソフトウェア法務の上手な対処法」 316頁以下
<文責> 弁護士・弁理士 溝上哲也 1998.1.5